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04 聞き役

 グラスにウーロン茶を注ぎ、テーブルでうつむき加減に腰を下ろしている知美の前に差し出した。
「まぁ、いろいろあるよ」
 慰めにもならない言葉を掛ける。
 ウーロン茶に手をつけずに、知美は相変わらず、だまって下を向いたままだ。
「まぁ、アレだ。過ぎてしまった事をクヨクヨしたって何の解決にもならないしやぁ……」
 そりゃ、長い人生いきてりゃぁ失敗の一つや二つ付いてくんだろうがぁ。
 私だって、ついさっき人差し指をグサリッやっちまったよ。
 内容の大きさは如何であれ、これと同じ事じゃないのか?
 今度から気をつけりゃ?それで一歩前進って訳なんじゃないの?
「じゃ……如何したら良いと思う?」
 この世の終わりってな顔して俯きながら、悩んで凹んで震えていた知美が、ふと顔を見上げて言った。
 如何したらって……そんな事いわれたってなぁ……。
 何でも、よく分からないが、如何やら気持ちのすれ違いで、仲のよかった友達仲間とトラブルを起こしてしまったらしい。
 そんでもって、何度かお詫びを入れたものの、それが相手側に拒否られて、上手く聞き入れてもらえずに、困っているらしい。
 とりあえず、こういう事は様子でも見ながら、ゆっくり時間をかけて解決していくのがベストなんだろうけど、さすがに私のところへこうしてやって来たって事は、もう知美の中では抱え込むには大きすぎる悩みになってしまっているって事だよな?
 そんな訳だから、切羽詰って如何しようもなくて、そんでもって私の所に頼るしかないって話しに来た訳だよな?
 そんでもって、知美の力になってやれるのは私だけなんやよな?
 う???ん……しゃ?ないなぁ……。
「やっぱり、もう一度誤りに行ってみようかな?」
「すでに知美からは何度かの仲直りしたいって意思表示はしてある訳なんやから、まぁ落ち着けって、そんなに解決を急いだって返って遠回りするだけやで……」
「そっかぁ……」と、グラスのウーロン茶に口を付ける。
 そうそう、まずこう言う時は、わざと時間をかけて、心が落ち着くのを待つに限るってもんよ。
 少なくとも、涙なんか出てる時に話し合ったって、何の解決にもならないし、逆に結果的にはマイナス方向に傾いてしまうだろうよ。
「うん。こんな時は、何でも少しずつで良いねん。大丈夫やで」
 比沙子は、精一杯の笑顔を向け、言い加えた。
「毎日生きてっけどやぁ、昨日の自分と今日の自分は同じように見えてて、実は違うんやってよ。あっ! コレ私の言葉じゃなく、エライ科学者がTVて言うてた意見な」
「うん」
「で、その科学者が言うには、人間は毎日ちょっとずつ生まれ変わってるわけよ。毎日色んなご飯食べて、その栄養分が自分の細胞になって、古い細胞は捨てられて、毎日すこしずつ生まれ変わってんねんて」
「ふぅ?ん」と、知美は頷きながら比沙子の話を聞いている。
「だから、アレやん。昨日の知美と今日の知美は同じようにみえるけど、違うんやって」
「へぇ?」
「体も生まれ変わってるみたいに、心も毎日少しずつ生まれ変わってるねん。だから、その人だって今日は許せないって思ってても、またそのうち分かってくれるよ。なっ」
「そっかなぁ……うん」
 そうそう落ち着いて、最善の方法をじっくり考えるんだ。
 ってか、あんまりじっくり1時間以上考えられても、コッチだって困るんだよなぁ……。
 比沙子の視線の先には、あの速達便の封筒が置かれている。

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