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05 せっかち

 どうにかこうにか知美は、少し落ち着きを取り戻した様だ。
 よかった、よかった。
 でも比沙子は、実のところ複雑な気持ちでいた。
 さきほどは、知美の事を思い意見していたはずだが、あの毎日少しずつ生まれ変わっているって言葉は、比沙子自身にも語りかけていたのだ。
 他人事なんかじゃないんだ。生まれ変わりたい。
 今の足踏み状態の自分から抜け出して、少しずつでも良いからシッカリ前を向ける自信のある自分に変わりたい。そう比沙子は思っていた。
 そう思い自分の中では焦りながらも、知美に対しての言葉は、
 そんなに解決を急いだって返って遠回りするだけやで……と、アドバイスしていた自分がいる。
 人間、自分の事となると物の分別がつかなくなってしまうらしい。
 って事は、おそらく知美に話して聞かせた方が正しいのか? 少々気持ちが急ぎすぎているのかもしれないな。
 こうして地道に文章を書き続けていることが大切なのかも知れないな。
 だって、書いていると、ドキドキして、今度こそは?って楽しいもんな。
 これだけで、本当は幸せなのかも知れないなぁ
 夢を追いかけている今が、最高なのかも知れないな。ふとそう思った。
「少し元気でてきたみたい」
 テーブルの向かい側に座っていた知美がこちらを向いた。
 知美の顔からは、すっかり涙が消えていた。
 なぜだかは分からないが、この時間知美も色々と考えたのだろう。
「そっか。少しは楽になった?」
 別に何を解決してってのも無いんだけど、しんどくなった気持ちを言葉にして誰かに聞いてもらうっていうのも良いモノかも知れないな。
 少し元気を取り戻した知美の顔を見ていると、そう思った。
「うん。ありがとう」
「如何いたしまして」
 そう言って、柄にもない挨拶を交わし、お互いに笑った。
「って……その指?」
「あぁ…コレ? あせりは禁物って事かな……」
 トホホ……。これも結局は焦って不注意から起きた勲章やぁ??!!
 比沙子は、人差し指の絆創膏を軽く握ってみた。
「お互いにセッカチなんかな?」
「似た者同士ってか」
 知美は、来た時とは別人の様に、笑顔で帰っていった。

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